地方の工務店がClaudeで現場写真から施工報告書を自動生成:作成時間を週10時間から35分に短縮
地方の工務店がClaudeで現場写真から施工報告書を自動生成:作成時間を週10時間から35分に短縮
「また今週も施工報告書が溜まってる…」
毎週金曜日の夜、事務所のデスクに山積みになった現場写真を前に、そんなため息をついていました。私は群馬県高崎市で創業28年の工務店「田村建設」を営む田村誠(48歳)です。住宅リフォームを中心に年間80〜100件の工事を手がけていますが、長年の悩みがありました。それが施工報告書の作成です。
写真を整理して、コメントを書いて、顧客ごとにフォーマットを整えて……。職人仕事は好きなのに、この書類仕事だけは本当に苦手で。気づけば毎週10時間以上を報告書作成に費やしていました。そんな私が、Claudeとの出会いで週35分にまで短縮できた話を、失敗も含めて正直にお伝えします。
なぜ施工報告書の作成がそんなに大変だったのか
うちの工務店では、工事完了時に顧客へ「施工報告書」を提出するのが慣習になっています。内容は、工事前・工事中・工事後の写真、使用した材料の品番、施工箇所の詳細説明、アフターメンテナンスのアドバイスなど。お客さんに「ちゃんとやってもらった」という安心感を持ってもらうためのものです。
問題は、この報告書を私一人で全部作っていたこと。うちは社員が私を含めて4人の小さな会社で、専任の事務スタッフもいません。現場が終わったあと、スマホで撮った写真を100〜200枚の中から選別して、Wordに貼り付けて、コメントを書いて……。1件あたり平均2〜3時間かかっていました。週3〜4件こなすと、それだけで毎週8〜12時間が消えていく計算です。
2025年の春ごろ、息子(大学2年生)に「AIで写真の説明文を書けるらしいよ」と教えてもらったのがきっかけです。最初は「建設の現場なんて、AIにわかるわけない」と半信半疑でしたが、試してみたら想像以上に使えた。そこから約1年かけて、今の仕組みを作り上げました。
実際にやっていること:Claudeを使った施工報告書の自動生成フロー
全体の流れ
まず、私が今使っているフローを大まかに説明します。
- 現場でiPhoneを使って工事前・工事中・工事後の写真を撮影(各フェーズ10〜30枚程度)
- 写真をGoogleフォトで自動バックアップ
- 報告書に使う写真を10〜15枚に絞り込む(ここは今も手作業)
- ClaudeのWebインターフェース(claude.ai)に写真をアップロードしてプロンプトを入力
- 生成されたテキストをWordのテンプレートに貼り付けて最終確認
- PDF化してメールまたは郵送で顧客へ提出
ポイントは、Claudeのマルチモーダル機能(画像を読み取ってテキストを生成する機能)をフル活用していること。写真を見せながら「これを報告書の文章にして」と頼めるので、私が一から文章を書く必要がなくなりました。
実際に使っているプロンプト①:工事前の状況説明
まず工事前の写真(劣化や破損の状態がわかるもの)を3〜5枚アップロードして、こう聞きます。
あなたは住宅リフォームの施工報告書を作成する専門ライターです。添付した写真は工事前の状態を撮影したものです。以下の条件で「工事前の状況」セクションの文章を書いてください。
【条件】
・顧客(50〜70代の一般の方)が読んでわかりやすい言葉で書く
・専門用語には必ず括弧内で説明を加える
・劣化の状態を具体的に描写する(色、形状、範囲など)
・「工事の必要性」が伝わるよう、放置するとどうなるかも1〜2文で加える
・文字数は200〜300文字程度
これで工事前の状況説明文が出てきます。写真から屋根材のひび割れや外壁の色あせを読み取って、「南面の外壁部分にチョーキング現象(外壁塗料が粉化して手に白い粉がつく状態)が全体的に見られます」といった具合に書いてくれます。
実際に使っているプロンプト②:施工内容の説明
工事中の写真(足場、下地処理、塗装工程など)を5〜8枚まとめてアップロードして、こう聞きます。
以下の写真は外壁塗装工事の施工過程を撮影したものです。写真を順番に見ながら、施工報告書の「工事内容」セクションを箇条書きで書いてください。
【追加情報】
・使用塗料:日本ペイント ファインシリコンフレッシュ(シリコン系)
・施工期間:2026年6月10日〜6月17日(5日間)
・施工箇所:南面・東面の外壁、軒天【条件】
・工程ごとに見出しをつけて整理する(高圧洗浄→下地処理→養生→塗装1回目→塗装2回目→完成確認)
・各工程でなぜその作業が必要かを1文で説明する
・使った材料や道具が写真に写っていれば積極的に言及する
・全体で400〜500文字程度
実際に使っているプロンプト③:完成後の所見と今後のメンテナンスアドバイス
工事完了後の写真を3〜5枚と工事前の写真1〜2枚を一緒にアップロードして、こう聞きます。
添付写真のうち最初の2枚が工事前、残りが工事完了後の状態です。施工報告書の「完成状態と今後のメンテナンスについて」セクションを書いてください。
【条件】
・工事前後の変化を具体的に説明する(色、光沢、状態の改善など)
・今後のメンテナンス時期の目安を記載する(今回はシリコン系塗料なので耐用年数を考慮)
・お客さんが自分でできる簡単なチェックポイントを2〜3つ挙げる
・最後に感謝の言葉と工務店名(田村建設)を自然に入れる
・全体で300〜400文字程度、温かみのある文体で
実際に使っているプロンプト④:一気通貫で報告書全体を生成する場合
慣れてきてからは、写真をまとめてアップロードして一気に全文を生成させることも多くなりました。
添付した15枚の写真を使って、住宅リフォームの施工報告書を作成してください。写真は工事前→工事中→工事後の順番でアップロードしています。
【工事概要】
・工事種別:屋根葺き替え(カバー工法)
・施工住所:高崎市○○町(顧客名:山田様邸)
・施工期間:2026年6月20日〜6月23日
・使用材料:ガルバリウム鋼板(スーパーガルテクト)【報告書の構成】
1. 工事前の状況(200〜250文字)
2. 工事内容・施工手順(箇条書き、各工程100文字程度)
3. 使用材料一覧(表形式で)
4. 完成後の状態(200〜250文字)
5. アフターメンテナンスアドバイス(箇条書き3〜5項目)
6. 担当者からのひと言(150文字程度、田村誠の名前で)顧客は60代の一般の方です。わかりやすく、でも丁寧な文体で書いてください。
このプロンプト一つで、報告書の8割が完成します。残り2割は私が目視で確認して、細かい数値(使用量、㎡数など)を手書きメモから転記する作業だけです。
Wordテンプレートとの組み合わせ
生成した文章はそのままではなく、あらかじめ作っておいたWordテンプレートに貼り付けます。テンプレートには田村建設のロゴ、会社情報、写真枠のレイアウトが設定済みで、Claudeが生成したテキストをコピペするだけで体裁が整います。写真の配置だけは手作業ですが、それでも全工程で35分以内に収まるようになりました。
失敗談と改善:うまくいかなかった3つのこと
失敗①「何でもわかってくれる」と思い込んでいた
最初の2〜3ヶ月は、本当にひどい出来の報告書を顧客に出しそうになりました。Claudeは画像の大まかな状況は読めますが、細かい建材の種類や劣化の程度を正確に判断できるわけではありません。たとえば、屋根のスレート材の「割れ」と「ずれ」の区別ができなかったり、外壁の「ひび割れ(クラック)」の深さを目視写真から判断できなかったり。
最初は「AIが言ったから合ってるだろう」と確認を怠った結果、お客さんから「報告書に書いてある症状と、私が見た状態が違う気がする」と指摘を受けたこともありました(冷や汗をかきました)。
解決策:プロンプトに「写真から判断できない情報は『要確認』と記載してください」という一文を必ず加えるようにしました。また、最終確認のチェックリストを5項目で作成し、提出前に必ず私が目を通すルールにしました。
失敗②:写真の順番や枚数を適当にアップロードしていた
Claudeに複数の写真を渡すとき、最初は「まあ、AIが並び替えてくれるだろう」と適当な順番でアップロードしていました。でも当然、時系列がバラバラだと生成される文章も意味不明になります。「工事が完了した後に下地処理を行いました」みたいな記述が出てきて、思わず笑ってしまいました。
解決策:写真アップロード前に「工事前→工事中(工程順)→工事後」の順番に並べ直すことをルール化。iPhoneのアルバム機能で「報告書用」というフォルダを作り、撮影時刻順に並べてから確認してアップロードするようにしました。これだけで精度が格段に上がりました。
失敗③:生成された文章をそのまま使って、口調が統一されなかった
Claudeは毎回少しずつ違うトーンで文章を生成します。あるときは丁寧でフォーマルな文体、あるときはやや砕けた文体。同じ報告書の中でも、セクションごとに口調がバラバラになってしまい、「なんか読みにくい報告書だな」とお客さんに言われたことがあります。
解決策:「文体の統一ルール」をプロンプトに毎回組み込むことにしました。「ですます調で統一」「一人称は『弊社』」「専門用語は必ず括弧で説明」という3つのルールをテキストファイルに保存しておき、すべてのプロンプトの冒頭にコピペしています。また、Claudeのカスタム指示機能(System Prompt)にこのルールを登録してからは、毎回貼り付ける手間も省けました。
成果:数字で見るBefore/After
Claude導入前と導入後(2026年6月現在)の比較をまとめました。
項目 | 導入前(2025年3月以前) | 導入後(2026年6月現在) | 改善率 |
|---|---|---|---|
報告書1件あたりの作成時間 | 平均2〜3時間 | 平均8〜10分 | 約90%削減 |
週間の報告書作成合計時間 | 8〜12時間(平均10時間) | 30〜40分(平均35分) | 約94%削減 |
報告書の提出タイミング | 工事完了後3〜7日後 | 工事完了翌日〜当日 | 大幅改善 |
顧客からのクレーム・問い合わせ件数 | 月平均3〜4件 | 月平均0〜1件 | 約75%削減 |
報告書の平均文字数 | 約800文字 | 約1,500文字 | 約2倍に増加 |
月間の工事受注件数 | 月平均6〜8件 | 月平均9〜11件 | 約35%増加 |
Claudeの月額コスト | — | 約3,000円(Pro版) | — |
数字で見ると改めてすごいと思います。特に嬉しいのは、報告書の品質が上がりながらも時間が短くなったという点です。以前の私が書いた報告書は正直、写真に一言添えた程度のシンプルなものでした。今は1,500文字以上の丁寧な説明文が標準になっています。
月間受注件数が35%増えたのも、直接的な因果関係は証明できませんが、「報告書がとても丁寧で安心した」という口コミからの紹介が増えたことは実感しています。あるお客さんは「こんなに詳しい報告書をもらったのは初めて。近所に勧めたくなった」と言ってくださいました。
また、浮いた週10時間のうち、5時間は新規顧客への提案書作成に使えるようになり、残り5時間は文字通り「家族と過ごす時間」に変わりました。48歳で初めて、金曜日の夜に書類仕事をしないで帰れるようになりました。
さらなる応用:次にやってみたいこと
見積書の自動作成への展開
施工報告書がうまくいったので、今度は現場調査写真からの見積書自動作成にも挑戦しています。お客さんの家を調査したときに撮った写真をClaudeに見せて「この劣化状態から必要な工事項目を洗い出して」と聞くと、かなり的確なリストが出てきます。まだ単価の入力は手作業ですが、工事項目の抜け漏れが減りました。
顧客対応メールの下書き生成
工事完了後の「お礼メール」や「点検のご案内」なども、Claudeに下書きを作ってもらうようになりました。工事内容と顧客の情報を渡せば、個別にカスタマイズされたメールが出てきます。毎回「お世話になります」から書く必要がなくなって、これも週1〜2時間の節約になっています。
社内の施工マニュアル整備
うちには28年分の施工ノウハウがありますが、ほとんどが私の頭の中にあるだけで文書化されていませんでした。現場写真とともに「こうしたほうがいい理由」を話しながらClaudeに文章化してもらう作業を少しずつ進めています。将来的には、新しいスタッフを採用したときに使える施工マニュアルになる予定です。
他の工務店への横展開
同業者の友人から「どうやったの?」と聞かれることが増えてきました。地域の工務店組合で事例発表の機会もいただいたので、今後は自分の仕組みをテンプレート化して、同じ悩みを抱える工務店仲間にも共有していきたいと思っています。私のような「IT苦手なおじさん」でもできた、というのが一番の説得力になっていると思います。
まとめ:IT苦手でも大丈夫。まず一枚の写真から始めてみて
正直に言います。私はもともとスマホの操作もあまり得意ではなく、「AIなんて自分には関係ない話」と思っていました。でも息子の一言がきっかけで試してみたら、建設業の現場仕事にこれほど使えるとは想像していませんでした。
大事なのは、完璧な仕組みを最初から作ろうとしないこと。私も最初の3ヶ月は失敗だらけでした。でも「現場写真を見せて、文章を書いてもらう」というシンプルな使い方から始めて、少しずつ改良を積み重ねた結果が今の仕組みです。
もし同じように「書類仕事が苦手」「時間が足りない」と感じている工務店の方がいれば、ぜひ試してみてください。月3,000円のコストで週10時間が返ってくるなら、これほどコスパの良い投資はないと私は思っています。
最初の一歩は、現場写真1枚をClaudeに見せて「この写真の状況を説明して」と打ち込むだけ。それだけでいいんです。
※本記事で紹介しているプロンプトや手順は、田村建設(架空の事例)での実践をもとに構成した内容です。Claude(Anthropic社)の機能や料金は2026年6月時点の情報です。実際の利用に際してはAnthropicの最新情報をご確認ください。