個人経営の整体院がNotebookLMで施術カルテ分析を自動化:リピート率が1.9倍に改善
個人経営の整体院がNotebookLMで施術カルテ分析を自動化:リピート率が1.9倍に改善
「また来てくれるかな…」と、施術を終えるたびに不安になっていた時期がありました。腕は磨いてきたつもりです。でも、なぜあの患者さんはパタッと来なくなったのか。なぜこの患者さんは毎月通い続けてくれるのか。その違いが、正直まったく見えていなかった。
整体院を一人で切り盛りしていると、施術・予約管理・SNS発信・掃除まで全部自分でやらなければならない。カルテを丁寧につけていても、それを「分析する」時間なんてどこにもない。カルテはただの記録で終わっていて、次の施術に活かせているのは自分の「なんとなくの記憶」だけ。これって、すごくもったいないことをしていたんだと、後になって気づくんですよね。
この記事では、神奈川県で整体院「からだ研究所 凛(りん)」を営む田中恵里さん(38歳)が、GoogleのNotebookLMを使って施術カルテの分析を自動化し、リピート率を1.9倍、売上を1.6倍に改善させた実践事例をお伝えします。特別なIT知識は必要ありません。月額費用はほぼゼロ。小さな整体院でも今すぐ再現できる方法です。
背景・きっかけ:「カルテは書いてるのに、全然使えてない」という気づき
田中さんが整体院を開業したのは2020年。当初は口コミだけで少しずつ患者さんが増え、2023年頃には月間延べ来院数が80〜90人ほどに成長していました。ところが、そこからなかなか伸び悩む時期が続きました。
「新規の患者さんは来てくれるんですけど、3回以内に来なくなってしまう方が全体の約60%もいたんです。自分なりに施術の質を上げようと勉強してはいたんですが、何が問題なのかが見えなくて。」
田中さんは開業当初からA4サイズの用紙に手書きのカルテを作成し、デジタル化したものをGoogleスプレッドシートにも入力していました。カルテには「初回来院日」「主訴(症状)」「施術内容」「患者のコメント」「次回提案内容」などが記録されており、150人分以上のデータが積み上がっていました。
転機が訪れたのは2025年の春。知人の歯科衛生士がNotebookLMを使ってスタッフ教育資料を作成しているという話を聞いたことがきっかけです。「カルテのデータを読み込ませたら、何か分析してくれるかもしれない」と直感的に思ったそうです。
「正直、最初はAIって難しそうで自分には無理だと思っていました。でも、NotebookLMって『文書を読み込んで質問に答えてくれる』だけでいいなら、私でもできるかもと思って。2週間くらい試行錯誤しながら、自分なりの使い方を見つけていきました。」
具体的な取り組み:NotebookLMでカルテ分析を仕組み化した全手順
ステップ1:カルテデータの整形とNotebookLMへの読み込み
まず田中さんが取り組んだのは、Googleスプレッドシートに蓄積していた施術カルテデータを、NotebookLMが読み込みやすい形に整えることでした。スプレッドシートのデータは列の項目がバラバラで、途中から記録項目が変わっている部分もあったため、最初に整形作業が必要でした。
整形後のカルテには以下の項目を統一して含めるようにしました。
- 患者ID(個人が特定できない匿名番号)
- 年代・性別
- 初回来院日
- 来院回数・来院間隔(日数)
- 主訴(肩こり、腰痛、頭痛など)
- 施術内容(部位・手技の種類)
- 施術後の患者コメント(「楽になった」「まだ残っている」など)
- 次回来院の有無(〇/✗)
- 離脱タイミング(何回目で来なくなったか)
このデータをCSVで書き出し、さらにテキスト形式(.txt)にも変換してNotebookLMにアップロードしました。NotebookLMは1プロジェクトにつき最大50のソースを読み込めるため、「患者属性別」「症状別」「来院継続者」「離脱者」の4つのテキストファイルに分けてインポートしました。
ステップ2:「なぜ離脱するのか」を探る分析プロンプト
NotebookLMにデータを読み込ませた後、まず田中さんが試みたのは「離脱のパターン発見」でした。以下が実際に使ったプロンプトです。
【プロンプト例①:離脱パターン分析】
「アップロードしたカルテデータをもとに、3回以内に来院が途絶えた患者の共通点を分析してください。年代・性別・主訴・施術後コメント・来院間隔の観点から、特にどのグループで離脱率が高いかを教えてください。また、離脱した患者と継続した患者の施術後コメントの違いで気づいたことがあれば具体的に教えてください。」
この質問に対してNotebookLMは、「30代女性・肩こり・施術後コメントに『その場は楽になったが翌日また戻った』という表現がある患者の離脱率が特に高い」「初回来院から次回予約までの間隔が14日を超えると離脱率が急上昇する」といった分析結果を返してきました。田中さんはこの結果を見て「なんとなく感じていたことが数字で確認できた」と話します。
ステップ3:継続患者の「共通言語」を発見するプロンプト
次に取り組んだのが、長期継続してくれる患者さんの特徴を言語化することです。
【プロンプト例②:継続患者の特徴分析】
「来院回数が10回以上の継続患者のデータだけを参照してください。この患者群に共通する施術後コメントの特徴的な言葉や表現はありますか?また、初回から3回目までの間にどのような変化が記録されているか、離脱患者との違いをまとめてください。」
この分析から判明したのは、継続患者の多くが「2回目か3回目の施術後に『自分の体の癖がわかってきた気がする』というニュアンスの言葉を言っている」という傾向でした。つまり、施術の効果だけでなく「自分の体への理解が深まる体験」がリピートにつながっていたのです。この発見は、田中さんの施術説明スタイルを大きく変えるきっかけになりました。
ステップ4:患者別の「次回施術提案文」を自動生成するプロンプト
分析結果を活かして、田中さんはさらに踏み込んだ使い方を始めます。施術後に患者へ送るフォローアップメッセージ(LINE公式アカウント経由)を、カルテデータをもとにNotebookLMで下書きするという方法です。
【プロンプト例③:個別フォローアップ文の作成】
「以下の患者情報をもとに、施術後2日後に送るLINEメッセージの下書きを作成してください。メッセージは200文字以内、押しつけがましくなく、患者が自分の体の変化に気づけるような内容にしてください。【患者情報:40代男性、主訴は慢性的な腰痛、今回は3回目の施術、施術後コメント『右腰の張りが少し残っている』、前回から施術間隔は10日】」
【プロンプト例④:月次サマリーレポートの作成】
「今月(〇月)の施術記録全体を振り返り、以下の観点でサマリーを作成してください。①今月最も多かった主訴TOP3、②リピート率が改善した患者層の特徴、③施術後コメントで気になるキーワード(改善が見られない症状など)、④来月の施術方針として意識すべき点。箇条書きで簡潔にまとめてください。」
ステップ5:週1回30分の「カルテ分析ルーティン」の確立
これらのプロセスを「週1回・月曜の朝30分」という固定ルーティンに落とし込んだことが、田中さんの大きな工夫です。具体的な手順は以下のとおりです。
- 前週の施術カルテをGoogleスプレッドシートに入力・整形(15分)
- 更新データをテキストファイルに書き出してNotebookLMにアップロード(5分)
- プロンプト③を使って要フォローアップ患者へのLINE文を作成(5分)
- 気になった傾向をメモに残して次週の施術方針に反映(5分)
月末にはプロンプト④を使って月次サマリーを作成し、翌月の施術計画に活かすというサイクルを構築しました。「ルーティン化したことで、分析が特別な作業じゃなくて当たり前の習慣になりました。これが一番大事だったと思います」と田中さんは振り返ります。
【プロンプト例⑤:施術説明スクリプトの改善】
「継続患者の分析で『自分の体の癖がわかった』という表現が多いことがわかりました。初回施術時に患者さんへ行う説明(施術の目的・体の仕組みの話)のスクリプトを、この観点を重視した内容にリライトしてください。所要時間は3〜5分、専門用語は使わず、患者が自分の体に興味を持てるような話し方で。」
失敗談と改善:うまくいかなかったこと、正直に話します
失敗①:個人情報のリスクを後から気づく
最初、田中さんは患者さんの名前や電話番号もカルテデータに含めたままNotebookLMに読み込もうとしていました。「クラウドにアップするのって大丈夫なの?」という疑問を後から持ち、調べてみて初めてリスクに気づいたそうです。
NotebookLMはGoogleのサーバー上でデータを処理するため、個人を特定できる情報(氏名・電話番号・住所)は絶対に含めてはいけません。田中さんはすぐに既存のデータから個人情報を削除し、患者IDを振り直す匿名化処理を行いました。「これを最初からやっていなかったのは本当に反省しています。皆さんはまず匿名化から始めてください」と強調していました。個人情報保護の観点から、この点は絶対に妥協しないことが重要です。
失敗②:プロンプトが曖昧すぎて使えない回答が返ってきた
最初の2週間は「カルテを分析してください」という漠然とした質問ばかりしていました。当然ながら返ってくる回答も「一般的なアドバイス」レベルのものばかりで、「これ、ネットで調べても書いてあることと同じじゃん」という状態でした。
改善のポイントは「誰の」「どの期間の」「何の観点で」「どんな形式で」という4要素を毎回プロンプトに含めること。この4点を意識するようになってから、回答の精度が劇的に上がりました。「プロンプトを書くのって、患者さんへの問診みたいなものだと気づいてから、一気に使いやすくなりました」と田中さんは笑います。
失敗③:NotebookLMの回答をそのままLINEで送って逆効果になった
フォローアップメッセージをNotebookLMで生成した直後、田中さんは文章を確認もせずにそのままコピペして送ってしまいました。すると患者さんから「なんか急に文章が丁寧すぎてびっくりしました(笑)」という反応が来たり、田中さんが普段使わないような言い回しが含まれていて「違和感がある」と感じさせてしまうケースが数件ありました。
解決策は「AIが作った下書きを、必ず自分の言葉でひと手間加えてから送る」というルールを設けたこと。具体的には、生成された文章の最初か最後に「今日も施術後いかがでしたか?」など自分らしい一文を加えるだけで、受け取る側の印象がまったく変わりました。AIはあくまで「下書きを作るアシスタント」。最後の仕上げは必ず人間が行うという意識が大切です。
失敗④:データの更新をサボって分析精度が落ちた
ルーティン化する前の時期、忙しさにかまけて3週間ほどカルテの入力・更新をサボった時期がありました。その結果、NotebookLMに読み込ませているデータが古くなり、「先月改善した患者さんがまだ問題ありとして分析されている」という状況が発生。フォローアップメッセージの内容も的外れになってしまいました。
「AIの精度はデータの鮮度に完全に依存しています。どんなに良いプロンプトを書いても、古いデータを食わせていたら意味がない」という教訓から、週1回のルーティン化を徹底することにしました。今では月曜の朝にNotebookLMを開かないと「なんか落ち着かない」という感覚になったそうです。
成果・数値:Before/Afterで見る改善の全容
NotebookLMを本格導入してから約8ヶ月後(2025年11月〜2026年6月の比較)の成果をまとめます。数字が物語るのは「分析することで、施術の外側も変わった」ということです。
指標 | 導入前(2025年3〜5月平均) | 導入後(2026年3〜5月平均) | 変化率 |
|---|---|---|---|
月間来院延べ人数 | 87人 | 142人 | +63% |
3回以内の離脱率 | 61% | 32% | ▲29ポイント |
リピート率(4回以上来院) | 39% | 74% | 約1.9倍 |
月間売上(概算) | 約42万円 | 約67万円 | 約1.6倍 |
1患者あたりの平均来院回数 | 2.8回 | 5.4回 | 約1.9倍 |
施術後フォローメッセージ返信率 | 12%(返信なし多数) | 41% | 約3.4倍 |
カルテ分析にかかる時間(月間) | ほぼ0分(感覚頼り) | 約120分(週30分×4) | 仕組み化 |
数字以外の変化として、田中さんが特に強調するのは「施術の説明が変わったこと」です。継続患者の分析から「体の癖を理解する体験」が重要だとわかってから、初回施術時の説明スクリプトを大幅に見直しました。専門用語を排除し、患者さんが「なるほど、私の体ってそうなっているんだ」と感じられるような説明に変えた結果、初回後の2回目予約率が38%から67%に跳ね上がったのです。
「売上が上がったのはもちろん嬉しいんですが、それ以上に『なぜリピートしてくれるのかがわかった』ことが一番の収穫です。自信を持って施術に臨めるようになりました」と田中さんは話します。
応用・発展:次のステージへの活用アイデア
季節・気候データとカルテデータの掛け合わせ分析
田中さんが現在試みているのが、気象データ(気温・湿度・気圧変化)と主訴の相関分析です。「梅雨の時期に頭痛・肩こりの訴えが増える」という体感を数値で確認し、季節先読みのコンテンツ発信(ブログ・Instagram)に活かすという試みです。NotebookLMに気象データのテキストファイルも追加してクロス分析することで、「低気圧が続く週の前に予防的な施術をすすめるメッセージを送る」という先手の顧客コミュニケーションが可能になります。
スタッフ育成・引き継ぎへの活用
現在は完全一人経営の田中さんですが、アシスタントを採用することを検討しています。その際、蓄積したカルテ分析結果とNotebookLMで作成した施術説明スクリプトを「院内マニュアル」として整備することで、田中さんの「施術哲学」を体系化できます。「私がいなくてもある程度の品質を保てる仕組みを作れる」という手応えを感じているそうです。
患者アンケートのテキスト分析への応用
定期的に患者さんに行うアンケート(紙またはGoogleフォーム)の自由記述回答をテキスト化し、NotebookLMに読み込ませることで、「患者さんが言葉にしにくい不満や要望」を掘り起こすことができます。「院の雰囲気」「施術以外の体験価値」に関するフィードバック分析は、カルテデータでは見えてこない患者心理を明らかにしてくれます。
同業者との情報共有・地域連携への展開
近隣の整体院・鍼灸院・マッサージ院と匿名化データを共有し、地域単位での「来院傾向レポート」を作成するという発展的な使い方も考えられます。個人情報を完全に除いた統計データであれば、業界全体の傾向把握に役立てることができます。田中さんは地域の治療家仲間数人とこのアイデアを共有し、小規模な勉強会も始めているそうです。
まとめ:小さな整体院だからこそ、データは武器になる
田中さんの事例が教えてくれるのは、「AI活用は大企業や大病院だけのもの」という思い込みが、いかに間違っているかということです。むしろ、個人経営の整体院だからこそ、患者さん一人ひとりとの関係性データが意味を持ち、きめ細かな分析が直接的な成果につながります。
NotebookLMは月額費用ゼロ(Google アカウントがあれば無料)で使えるツールです。必要なのは、すでに手元にあるカルテデータと、週30分のルーティンを続ける意志だけ。特別なプログラミング知識も、高額な導入費用も必要ありません。
「AIって聞くと難しそうで、自分には関係ないと思っていました。でも実際にやってみたら、一番難しかったのはカルテの入力を続けること(笑)。AIそのものより、データを積み上げる習慣の方がずっと大切だと気づきました」という田中さんの言葉が、すべてを表しています。
あなたのカルテの中にも、まだ眠っている「答え」があるはずです。NotebookLMは、その答えを引き出すための優秀なアシスタントになってくれます。まずは今あるカルテデータを匿名化して、一つ質問を投げかけるところから始めてみてください。きっと、自分の施術の「なぜ」が少しずつ見えてくるはずです。
この記事のポイントまとめ
- 個人情報の匿名化が最優先:氏名・電話番号・住所は必ず削除してからNotebookLMにアップロード
- プロンプトは「誰の・何の期間・何の観点・どんな形式で」の4要素を含める
- 週1回30分のルーティンが継続の鍵:特別な作業ではなく、習慣にする
- AIの回答は必ず人間がひと手間加えてから使う:下書きツールとして活用する
- 分析の目的は「施術の外側(説明・フォロー)を変えること」:データで感覚を言語化する
※本記事は実際の整体院運営をもとにした事例記事です。記載の数値は個別の事例であり、すべての方に同様の効果を保証するものではありません。また、医療情報の管理にあたっては、各自で個人情報保護法および関連法令を遵守した運用を行ってください。