地方の中古車販売店がChatGPTで在庫車の販売原稿を月100本作成:広告費を年80万円削減

地方の中古車販売店がChatGPTで在庫車の販売原稿を月100本作成:広告費を年80万円削減
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地方の中古車販売店がChatGPTで在庫車の販売原稿を月100本作成:広告費を年80万円削減

「また今月も外注費が膨らんだ……」

在庫が30台、40台と増えるたびに、コピーライターへの発注費用がかさむ。1本あたり8,000円のライティング費用は、月に50本発注すれば40万円。年間にすると480万円近い出費になる。しかも完成まで3〜5日かかるため、「今すぐ売りたい車」にスピーディーに対応できない。地方の中小規模の中古車販売店が直面するこの課題は、業界では「あるある」の悩みだ。

北海道・旭川市で中古車販売店「オートギャラリー北星」を営む山田浩二(42歳)さんは、2024年10月からChatGPTを使った販売原稿の自動生成に取り組み始めた。その結果、外注していたコピーライティング費用を年間80万円以上削減し、さらに問い合わせ件数を2.4倍に伸ばすことに成功した。この記事では、山田さんが実際に使ったプロンプトや手順、そして失敗から学んだ改善点を余すことなく紹介する。

背景・きっかけ:「このままでは利益が出ない」という危機感

オートギャラリー北星は、山田さんが先代の父から引き継いだ創業28年の地域密着型の中古車販売店だ。スタッフは山田さんを含めて4名。在庫台数は常時40〜60台を抱えており、地元の顧客を中心に年間150〜180台を販売している。

「父の時代はチラシとくちコミだけで売れていましたが、今はカーセンサーやGoo-net、自社サイトへの掲載が必須です。各媒体で原稿の書き方も違うし、同じ車でも20代向けと60代向けでは訴求ポイントが変わる。以前は地元のフリーライターさんにお願いしていましたが、1本8,000円×月50本で毎月40万円が飛んでいきました」

転機となったのは、2024年9月に参加した北海道中古車販売業協会の研修会だ。同業の仲間からChatGPTを使って販売原稿を作っているという話を聞いたのがきっかけだった。

「正直、最初は半信半疑でした。AIが書いた文章なんてロボットっぽくて使い物にならないだろうと思っていたんです。でも実際に話を聞いてみると、プロンプトの工夫次第でかなりクオリティが出るというので、試してみることにしました」

当時の山田さんはChatGPTどころかAI自体ほぼ未経験。まずは有料版のChatGPT Plus(月額3,000円程度)を契約し、ゼロから試行錯誤が始まった。

具体的な取り組み:実際に使ったプロンプトと手順を全公開

ステップ1:車両情報の「入力シート」を作る

まず山田さんが取り組んだのは、ChatGPTに渡す情報を整理するための「車両情報入力シート」をGoogleスプレッドシートで作ることだった。スタッフが誰でも同じフォーマットで入力できるよう、以下の項目を定めた。

  • 車種・グレード・年式・走行距離・車体色・ミッション
  • 主な装備(ナビ・バックカメラ・シートヒーター等)
  • 車検残・修復歴の有無・内外装のコンディション(5段階)
  • この車の「推しポイント」(スタッフが感じた良い点を自由記入)
  • 想定ターゲット(20代・ファミリー層・シニア層など)
  • 掲載媒体(カーセンサー・Goo-net・自社サイト・SNS)

「推しポイントの自由記入欄が後から効いてくるんです。『エンジン音がやたら静か』とか『前オーナーが几帳面な方でマット類がほぼ新品』とか、数字には出てこない生の情報をChatGPTに渡すと、原稿がぐっとリアルになります」と山田さんは言う。

ステップ2:ベースとなる「マスタープロンプト」の構築

次に、どの車両にも使い回せる「マスタープロンプト」を作成した。試行錯誤の末、現在使っている完成版がこちらだ。

【プロンプト例①:カーセンサー向け販売原稿(ベース)】

あなたは中古車販売の専門コピーライターです。以下の車両情報をもとに、カーセンサーに掲載する販売原稿を作成してください。

【車両情報】
車種:2020年式 トヨタ アルファード 2.5S Cパッケージ
走行距離:32,000km
車体色:プレシャスシルバー3
主な装備:純正10インチナビ、バックカメラ、両側パワースライドドア、本革シート、シートヒーター全席、ムーンルーフ
車検残:2026年9月まで
修復歴:なし
内外装コンディション:外装4/内装5
推しポイント:前オーナーが非喫煙者で車内の匂いがまったくない。シートの縫い目もほぼ新品同様
想定ターゲット:子育て世代のファミリー層(30〜40代)
掲載媒体:カーセンサー(本文400〜500文字)

【条件】
・冒頭の1行は思わずクリックしたくなるキャッチコピーにすること
・専門用語は避け、ファミリー層が読んでわかりやすい言葉を使うこと
・走行距離や修復歴なしなどの安心ポイントを自然に盛り込むこと
・押しつけがましいセールストークは避け、背中を押すような温かいトーンにすること
・最後にお問い合わせを促すCTAを1行入れること

このプロンプトを叩き台に、媒体別・ターゲット別のバリエーションを追加で作成していった。

ステップ3:媒体別・ターゲット別のプロンプト派生版

【プロンプト例②:Instagram向け(ファミリー層)】

上記のアルファードの情報をもとに、Instagramのキャプションを作ってください。

【条件】
・150〜200文字の短め文章
・絵文字を5〜8個使って読みやすくすること
・「#旭川中古車」「#アルファード」「#ファミリーカー」などのハッシュタグを10個追加すること
・価格や問い合わせ先(電話番号)は最後に記載すること
・子育て世代が「自分ごと」として読める内容にすること

【プロンプト例③:シニア層向けの原稿バリエーション】

同じ車両で、60〜70代のシニア層向けに書き直してください。

【条件】
・安全性・乗り降りのしやすさ・維持費の安さを優先的に訴求すること
・子供や孫を乗せるシーンを想起させる表現を入れること
・難しいカタカナ表現はなるべく避けること
・文体は丁寧語(ですます調)で統一すること

【プロンプト例④:軽自動車・一人暮らし向け】

以下の車両情報をもとに、一人暮らしを始める20代女性向けのカーセンサー掲載文を作成してください。

車種:2021年式 ホンダ N-BOX G・Lターボ ホンダセンシング
走行距離:18,000km/車体色:プレミアムサンセットオレンジII
推しポイント:前オーナーが丁寧に使用しており、シートにシミ・汚れ一切なし。純正ドライブレコーダー付き

【条件】
・安全装備(ホンダセンシング)を初心者にもわかりやすく説明すること
・「かわいい」「乗りやすい」という感情的な価値と、維持費が安いという経済的価値を両方盛り込むこと
・全体のトーンは親しみやすく、友達に話しかけるような文体で

ステップ4:量産の仕組みを整える

プロンプトのひな型が完成した後、山田さんは作業フローを整備した。スタッフの鈴木さん(入社2年目・27歳)に車両情報の入力とChatGPTへの貼り付けを担当させ、出力された原稿のチェックと微修正を山田さん本人が行う体制にした。

「最初は私が全部やっていましたが、プロンプトが固まってからは鈴木に任せました。彼はAIに詳しくなかったけど、シートに入力してプロンプトに貼り付けるだけなので、1週間で慣れてくれました。今は1台分の原稿(カーセンサー・Goo-net・Instagram・自社サイト用の4パターン)を30分以内で作れています」

月の在庫台数50台×各4パターン=計200本の原稿を、実質2名で月の総作業時間は約40時間(1本12分換算)でこなしている。以前は外注していた分だけでも月50本、金額にして月40万円かかっていた。

失敗談と改善:うまくいかなかった3つの壁

失敗①:「ふわっとした指示」では使えない原稿しか出てこなかった

最初の1〜2週間は、正直なところ「これは使えない」と感じる原稿ばかりだった。プロンプトが「中古車の販売原稿を書いてください」程度の簡単なものだったため、出力される文章が汎用的すぎてどの車にも当てはまる内容になってしまった。

「『魅力的な一台です』とか『ぜひご検討ください』みたいな当たり障りのない文章が出てきて、これじゃ意味ないなと。問い合わせを増やすためには、その車ならではの具体性が必要なんです」

改善策:条件を5〜8項目に細分化し、「推しポイント」欄に必ず2〜3個の具体的な情報を入力するルールを設けた。また「絶対に使ってほしくない表現リスト」(例:「高品質」「お買い得」「絶対後悔しない」などの抽象ワード)をプロンプトに追加したことで、出力の質が一気に上がった。

失敗②:カーセンサーの文字数制限でそのまま使えなかった

カーセンサーやGoo-netには媒体ごとに文字数制限がある。ChatGPTに「400〜500文字で」と指定していたにもかかわらず、出力してみると620文字になっていることが多かった。スタッフがそのままコピペして掲載しようとし、エラーになるというトラブルが頻発した。

「文字数の感覚がAIにはまだ甘いんですよね。毎回修正するのが面倒で、最初は鈴木も嫌がっていました(笑)」

改善策:プロンプトに「出力後、必ず文字数を数えて報告し、オーバーしている場合は自分で修正して再出力してください」という一文を追加した。さらに「本文は必ず400字以内に収めること。余裕があれば380〜395字程度が理想」と具体的な数値で指定するようにしたことで、修正作業が月20件→3件以下に減った。

失敗③:専門用語の「誤訳」で顧客クレームが出た

これが一番ヒヤリとした失敗だ。あるミニバンの原稿でChatGPTが「フリップダウンモニター付き」と書いたが、実際はその装備がついておらず、問い合わせをした顧客から「話が違う」とクレームが入った。スタッフが入力シートを埋める際、装備一覧を確認し忘れてChatGPTの「推測補完」を見逃したのが原因だった。

「AIは入力された情報をもとに書くんですが、たまに『それっぽい装備』を勝手に追加してくることがあったんです。これは本当に危ない。中古車の世界では装備の誤記載は信頼問題に直結します」

改善策:プロンプトに「入力された車両情報に記載されていない装備・機能については、絶対に追加・推測しないこと」という厳命を追加。さらに山田さんが最終確認を必ず行うダブルチェック体制に変更した。この改善後、装備に関する誤記載は0件になっている。

成果・数値:Before/After比較で見えてきた変化

ChatGPT導入から約8ヶ月が経過した2025年6月時点での成果をまとめる。

項目

導入前(2024年9月)

導入後(2025年6月)

変化

月間販売原稿作成本数

約50本(外注)

約100本(社内)

+100%(2倍)

1本あたりのコスト

8,000円

約150円(人件費換算)

約-98%

月間ライティング外注費

約40万円

約3,000円(ChatGPT Plus代)

約-40万円/月

年間コスト削減額

約80万円削減(※月30万円外注分削減×8ヶ月換算)

原稿作成にかかる時間(1本)

外注で3〜5日待ち

社内で約12分

大幅短縮

月間問い合わせ件数

約45件

約108件

+2.4倍

成約率

約22%

約26%

+4ポイント

掲載媒体数

2媒体(カーセンサー・Goo-net)

4媒体(+自社サイト・Instagram)

2媒体追加

問い合わせが2.4倍になった背景には、原稿の本数が増えたことに加えて、ターゲット別に文章を最適化できるようになったことが大きいと山田さんは語る。

「以前は1台につき1パターンの原稿しかありませんでした。でも今は同じ車でも『ファミリー向け』『シニア向け』と訴求を変えた原稿を複数の媒体に出せるようになった。読んだ人が『自分に向けて書かれた文章だ』と感じるのか、問い合わせの質も上がっています。『原稿を読んで決めました』というお客さんが増えましたね」

また、以前は外注の都合上、在庫が入ってから掲載まで平均4〜5日かかっていたが、今は翌日には全媒体に掲載できるため、売れ筋車種の機会損失も大幅に減ったという。

応用・発展:さらなる活用アイデア

販売原稿の自動生成で自信をつけた山田さんは、2025年に入ってからChatGPTの活用範囲をさらに広げている。

活用①:顧客への返信メール文の下書き作成

問い合わせメールへの返信をChatGPTに下書きさせる使い方を始めた。「お問い合わせ内容」「顧客の年代・トーン」「在庫状況」を入力すると、丁寧で的確な返信文が30秒で出来上がる。スタッフが加筆・確認して送信するだけなので、メール対応の時間が従来の3分の1に短縮された。

活用②:買取査定時のトークスクリプト生成

顧客が持ち込む車の状態情報を入力すると、買取査定時に使えるトークスクリプトをChatGPTが自動作成する。「この車の良い点と、価格を抑えなければならない理由をロジカルに説明するスクリプト」という使い方が特に効果的で、新人スタッフの査定交渉スキルが短期間で向上した。

活用③:月次の在庫分析レポート文章化

Googleスプレッドシートにまとめた月次の販売データをCSV形式でChatGPTに貼り付け、「今月の傾向分析と来月の仕入れ方針をまとめてください」と指示する使い方も始めた。数字の読み取りと文章化が苦手だった山田さんにとって、経営判断の言語化ツールとして重宝しているという。

「最終的には、車両情報を入力シートに記入したら、全媒体の原稿から返信メールのひな型まで全部ワンクリックで出てくる仕組みを作りたい。今はまだ半手動ですが、GASやMakeを使った自動化も勉強し始めています」と山田さんは話す。

まとめ:地方の小さな店だからこそ、AIは武器になる

大手ディーラーは専属のライターやデジタルマーケティング担当を抱えている。しかし、地方の中小規模店はそうはいかない。だからこそ、ChatGPTのような生成AIは「人手不足を補う最強のツール」になりえる。

山田さんが教えてくれた一番大切なことは、「完璧なプロンプトを最初から作ろうとしないこと」だ。最初は雑でもいい。使いながら失敗して、少しずつ改善していけばいい。現場の「推しポイント」という人間ならではの感覚をAIにうまく渡すことで、機械的ではなく、温度のある原稿が生まれる。

年80万円のコスト削減と問い合わせ2.4倍という数字は、派手に聞こえるかもしれない。でも実態は「スプレッドシートに入力して、プロンプトに貼り付けるだけ」という地道な積み重ねだ。特別なITスキルは一切いらない。あなたの店でも、今日から始められる。

※本記事に登場する人物名・店舗名は、実際の事例をもとにした架空の設定です。数値は取材に基づく参考値です。

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