中小建設会社の経理担当がCopilotで請求書・領収書の仕訳入力を月35時間削減:ミス件数もゼロに

中小建設会社の経理担当がCopilotで請求書・領収書の仕訳入力を月35時間削減:ミス件数もゼロに
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中小建設会社の経理担当がCopilotで請求書・領収書の仕訳入力を月35時間削減:ミス件数もゼロに

「また月末が来る…」と思うたびに、胃が重くなる経験、ありませんか。

私、田中みどり(42歳)は、従業員80名ほどの中堅建設会社「東和建設工業株式会社」で経理を15年以上担当しています。工事の請求書、外注費の領収書、資材購入の明細書——毎月処理しなければならない伝票は300枚を優に超えます。それを一枚一枚、科目を確認しながら会計ソフトへ手入力していくのは、正直なところ「修行」としか言いようのない作業でした。

ところが今年の初め、MicrosoftのCopilotを経理業務に本格導入したことで、状況が一変しました。月に35時間以上かかっていた仕訳入力作業が劇的に短縮され、さらにゼロにはならないと半ば諦めていた入力ミスが、導入後3ヶ月連続でゼロを達成しています。この記事では、私が実際に試行錯誤しながら構築した活用方法を、包み隠さずお伝えします。

なぜAI導入に踏み切ったか:限界だった「ひとり経理」の実態

うちの会社は社長を含めて80名規模ですが、経理は私ともう一人の後輩(入社3年目の女性)の2名体制です。建設業の経理は一般業種と比べて複雑で、工事ごとに原価を管理する「工事別原価計算」が必要です。同じ「材料費」でも、どの現場に紐づくかで仕訳が変わりますし、外注費の消費税区分(課税・非課税・免税)の判断も常に神経を使います。

昨年末に会計事務所の担当者から「インボイス制度への対応で仕訳の複雑さが増していますね」と言われたとき、正直、笑えませんでした。適格請求書発行事業者かどうかの確認作業が増えた上に、案件数は前年比20%増。残業は月平均25時間を超えていて、後輩も「転職を考えている」とこぼしていました。

転機は2026年の2月。社長が「生産性向上のためにMicrosoft 365を全社導入する」と決定したことです。最初は「どうせ使いこなせない」と冷ややかに見ていた私ですが、Microsoft 365 Business StandardについてくるCopilotの説明を聞いて、「もしかしたら、これは経理で使えるかもしれない」とピンとくるものがありました。ExcelやWord、Outlookと連携できるというのが、決め手でした。

同月末、まず自分の業務だけで試験的に使い始め、3月から本格運用に入りました。

具体的な取り組み:実際の手順とプロンプトを全公開

全体の業務フローを再設計する

いきなりCopilotに何でも任せようとすると失敗します(これは後の失敗談でも触れます)。まず私がやったのは、現状の仕訳入力フローを紙に書き出して、「Copilotが得意なこと」と「人間が判断すべきこと」を分けることでした。

具体的には、以下の3ステップに業務を再設計しました。

  1. Step1:書類の情報をExcelに集約する(スキャンPDF+手入力)
  2. Step2:CopilotにExcelを読み込ませて仕訳案を生成させる
  3. Step3:人間が仕訳案を確認・修正して会計ソフトへ取り込む

ポイントは「Copilotが仕訳を決める」のではなく、「Copilotが仕訳の下書きを作る」という位置づけにしたことです。最終判断は必ず私が行います。この考え方があったからこそ、税理士や会計事務所にも「それなら問題ない」と承認をもらえました。

Excelの「仕訳マスター台帳」を整備する

Copilotへの指示精度を上げるために、まず「仕訳マスター台帳」をExcelで作りました。これは、よく出てくる取引パターンと勘定科目・税区分をまとめた一覧表です。

例えば「足場レンタル料」→「工事原価・外注費・課税10%」、「現場作業員の弁当代」→「福利厚生費・課税10%(ただし一人5,000円超は交際費)」といった具合に、30パターンほどを整備しました。このマスター台帳があることで、Copilotへの指示に「この台帳のルールに従って」と添えるだけで、精度が格段に上がります。

実際に使っているプロンプト5選

以下に、私が日常的に使っているプロンプトをそのまま紹介します。社名や固有名詞は一部伏せています。

プロンプト①:請求書情報からの仕訳案生成

以下の請求書情報をもとに、建設業の会計仕訳を作成してください。
添付の「仕訳マスター台帳」のルールに従い、勘定科目・補助科目・消費税区分・工事番号を含む形式で出力してください。

【請求書情報】
発行者:山田電気設備株式会社(適格請求書発行事業者:登録番号T1234567890123)
件名:〇〇マンション新築工事 電気配線工事
金額:税抜 450,000円、消費税45,000円、合計495,000円
工事番号:2026-047

出力形式:
借方科目/借方補助科目/借方金額/貸方科目/貸方金額/消費税区分/工事番号/摘要

プロンプト②:複数の領収書を一括処理する

添付のExcelファイル「領収書一覧_2026年5月分」には、現場立替経費の領収書情報が入力されています。
各行について、「仕訳マスター台帳」のルールに従って仕訳を生成し、新しい列として追加してください。
判断が難しいものは「要確認」フラグを立てて、判断理由も記入してください。
なお、適格請求書発行事業者番号が空欄のものは仕入税額控除が使えないため、消費税区分は「課税(控除不可)」としてください。

プロンプト③:勘定科目の判断に迷ったときの壁打ち

建設業の経理に詳しい会計の専門家として回答してください。
以下の支出について、適切な勘定科目と消費税区分を教えてください。
複数の選択肢がある場合は、それぞれの根拠と違いも説明してください。

【支出内容】
現場近くのコインパーキング代 2,800円(領収書あり、インボイス非対応)
用途:現場監督が自家用車で現場に向かった際の駐車代

プロンプト④:会計ソフト取込み用CSVへの変換

添付の「仕訳データ_5月分.xlsx」を、弥生会計のインポート用CSV形式に変換してください。
弥生会計の仕訳日記帳インポート形式(伝票番号・伝票日付・借方コード・借方名称・借方金額・貸方コード・貸方名称・貸方金額・摘要・税区分コード)に合わせて出力してください。
科目コードは添付の「科目コード一覧」を参照してください。

プロンプト⑤:月次チェックリストの自動作成

今月(2026年5月)の仕訳データから、以下の観点でチェックリストを作成してください。
①未払金の残高が前月末から大きく増減している工事番号
②消費税「要確認」フラグが立っているもの一覧
③同一業者への支払いが月内に5回以上ある取引(まとめ請求漏れの可能性)
④金額が50万円以上の外注費で、工事番号が未入力のもの
結果はチェックリスト形式で、対応状況を記入できるようExcel表として出力してください。

ExcelとCopilotの連携で「半自動化」を実現

5月の1ヶ月間で処理した請求書・領収書は合計342枚でした。このうち、仕訳マスター台帳に一致する「定型パターン」は約75%(256枚)で、これはCopilotがほぼそのまま処理できます。残りの約25%(86枚)は「要確認」フラグが立ち、私が個別に判断しました。

以前は342枚すべてを一枚一枚手入力していたので、この「75%はCopilotが下書きを作り、私は確認だけ」という分業が、時間削減の核心です。

失敗談と改善:こんなことで詰まりました

失敗①:プロンプトが曖昧で「なんでも外注費」になってしまった

最初の2週間は、プロンプトに「建設業のルールで仕訳して」とだけ指示していました。するとCopilotは迷ったときに全部「外注費」に分類してしまう傾向がありました。現場清掃費も、備品購入費も、交通費も——全部外注費。工事原価は一括で管理できていましたが、費用の内訳が見えなくなってしまい、後から「修繕費はいくら使ったか」を集計しようとしても全くわかりませんでした。

改善策:「仕訳マスター台帳」を先に整備して、「迷ったときは外注費にせず、必ず要確認フラグを立てること」という禁止ルールをプロンプトに明記しました。これだけで精度が大幅に改善しました。

失敗②:インボイス番号の確認をCopilotに丸投げしてしまった

適格請求書発行事業者かどうかの確認を、「領収書に番号が書いてあればOK」とCopilotに判断させていた時期がありました。ところがある取引で、番号は記載されているのに国税庁のデータベースで検索すると登録が取り消されていた業者がいることが発覚。税理士から「これは仕入税額控除が使えません」と指摘されました。

改善策:新規取引先については、国税庁の「インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト」で手動確認することをルール化しました。Copilotへは「番号があっても登録確認済みのもの以外は要確認フラグを立てる」と指示を変更しました。月1回、Copilotに未確認業者の一覧を出力させて、まとめてチェックする運用にしています。

失敗③:CSVインポートで会計ソフトが文字化けした

Copilotに作ってもらったCSVをそのまま弥生会計に読み込んだら、摘要欄が文字化けして使い物にならなくなりました。原因はCopilotがUTF-8でファイルを出力するのに対して、弥生会計のインポートがShift-JISを要求していたためです。1時間格闘した末に気づきました。

改善策:プロンプトの最後に「文字コードはShift-JISで保存してください」と追記することで解決しました。ただしCopilot上での直接変換には限界があったため、ExcelのPowerQueryで文字コードを変換するマクロを別途作成し、「Copilot→Excel→文字コード変換→弥生会計」という流れを固定しました。

失敗④:後輩に引き継いだら「プロンプトの意味がわからない」と言われた

私が一人で構築したプロンプト集を後輩に渡したところ、「この『適格請求書発行事業者』って何ですか?」「要確認フラグって何をすればいいんですか?」と質問攻めにあいました。プロンプトの意味は理解できても、前提知識がないと判断できない部分が多かったのです。

改善策:プロンプト集に「用語集」と「判断フローチャート」を添付しました。また、「要確認」フラグが立った場合の処理手順を、スクリーンショット付きのマニュアル(Word10ページ)にまとめました。このマニュアル自体もCopilotに下書きを作ってもらったので、作成時間は2時間ほどで済みました。

成果・数値:Before/Afterで見る業務改善の実績

3ヶ月間(2026年3月〜5月)の運用データをまとめました。

項目

導入前(2026年2月まで)

導入後(2026年3〜5月平均)

改善率

月間仕訳入力作業時間

約47時間

約12時間

▲74.5%(▲35時間)

仕訳入力ミス件数(月)

平均8〜12件

0件(3ヶ月連続)

▲100%

月次締め作業の完了日

翌月8〜10日

翌月3〜4日

約5日前倒し

月間の時間外労働(経理部門)

2名合計 約55時間

2名合計 約18時間

▲67%(▲37時間)

処理書類枚数(月)

約290枚

約340枚(件数増加)

件数増でも時間減

要確認フラグ対応時間(月)

(集計なし・都度対応)

約3時間

可視化・集約化

マスター台帳メンテナンス時間(月)

0時間(存在せず)

約1時間

新規コスト(許容範囲)

数字だけでなく、定性的な変化も大きかったです。以前は月末が近づくと「間に合うか」という焦りが常にありましたが、今は余裕を持って締め作業ができています。後輩も「入力作業だけじゃなく、数字の中身を考える時間が増えた」と言っていて、仕事の質も変わってきました。

税理士からも「締め日が早まったので試算表の確認が余裕を持ってできるようになった」と好評で、先月は「仕訳の精度も上がっているね」と言ってもらえました。これが一番うれしかったかもしれません。

応用・発展:次にやりたいこと、やり始めていること

工事原価の見込み管理への展開

今は仕訳入力の自動化が主ですが、次のステップとして「工事ごとの原価進捗管理」にCopilotを活用しようとしています。現場監督が週1回、Excelの進捗報告書に実績数値を入力すると、Copilotが「予算対比・完成工事高見込み・利益率の変化」を自動でレポートしてくれる仕組みを試作中です。建設業特有の「工事完成基準」「工事進行基準」の計算もプロンプトに組み込めそうで、社長への月次報告資料の作成時間も半分以下にできると期待しています。

支払い業務のリマインダー自動化

現在、外注先への支払期日管理はExcelで手動チェックしています。CopilotとOutlookを連携させて、「支払期日3日前に自動でリマインダーメールを下書き生成する」フローをPower Automateで構築する計画があります。支払い遅延は外注先との信頼関係に直結するため、ここのミスゼロ化も急務です。

他部門への横展開

経理での成功事例を社内で共有したところ、営業部門から「見積書の作成に使えないか」、工務部門から「工程表の更新に使えないか」という声が上がってきました。私が作ったプロンプト設計の考え方——「まずマスター台帳を作る」「人間の判断が必要なものは要確認フラグで可視化する」——は他の業務にも応用できると思っています。来月から社内AI活用推進の勉強会を月1回開催することになりました。

まとめ:「経理のDX」は特別なスキルがなくてもできる

私はエンジニアでもなければ、プログラミングの知識もありません。ExcelのマクロはVLOOKUPが書ける程度で、AIについては「なんとなく怖い」という先入観すらありました。それでもCopilotを経理業務に活用して、月35時間の削減とミスゼロを達成できました。

大切なのは、「AIに全部任せる」のではなく、「AIを優秀な下書きアシスタントとして使う」という発想の転換です。最終判断は必ず人間が行い、AIは「定型作業の処理」と「見落としの検出」に集中させる。この役割分担を最初に決めておくことが、失敗を最小限にする一番のコツでした。

もし今、毎月の伝票入力作業に追われて「これが私の仕事なの?」とモヤモヤしているなら、ぜひCopilotを試してみてください。特別な予算もシステム投資も不要です。Microsoft 365を会社で使っているなら、今日からでも始められます。最初の一歩は、自分が一番しんどいと感じている定型作業を一つだけ選んで、Copilotに「こんなことできる?」と聞いてみることです。

私の経験が、同じように現場で奮闘している経理担当の方の参考になれば、これ以上うれしいことはありません。


※本記事で紹介したプロンプトや手順は、筆者の実務環境(Microsoft 365 Business Standard、弥生会計24、Windows 11)をもとにしています。ご利用の環境によって動作が異なる場合があります。また、税務判断については必ず税理士・会計士にご確認ください。

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